いつものS極とN極。

私です。

先日、友人と飲みに行ったんです。
とくにこれと言って理由があるわけでもない、唯々、会って、駄弁って、飲んで。
それだけなんですけどね。
その友人、一つ年下なんですよね。
出逢って5,6年になる仲なんです。
出会いはネットがきっかけ。Twitter。。
Twitterを通して出会ったんです。
初めて彼と顔を合わせた時『あ、この人とは仲良くできないな』と思ったんですよね、瞬間的に。
それなのに、不思議なもので今では暇な時には会って遊んだり、食事したりする仲にまでなってしまった訳で。

私とその友人、色々と真逆なんですよ。
何が 真逆 か。
性格、好み。こう、なんて言うんだろうな、アイデンティティというか、私と彼を成り立たせているそのモノが真逆って言うんですかね。
兎に角、真逆なんです。正反対なんです。
彼はポジティブで私はネガティブ。
彼は短気で私は気長。
彼は辛党で私は甘党。
彼は夏が好きで私は冬が好き。
彼はおしゃべりで私は無口。
彼は女遊びが好きで私は女遊びとは無縁。
彼は車が好きで私は車など一切興味が無い。
彼はパチンコによく行くが私はパチンコなどしない。
彼は人に関心があるが私は他人に無関心。
お酒の好み、服装の傾向、音楽のジャンル。
言い出したら恐らくキリが無い。

彼との共通点と言えば喫煙者であること、足を悪くしていること、気分屋であること、くらいしか思い浮かばない。
兎に角、真逆、正反対なんです。

そんな友人と飲みに行ったんです。

行きつけの居酒屋へ向かった。
カウンター席に座った。メニュー表を眺めて『なに注文する?』と聞いてくる友人。
『適当に』と答える私。
友人はビール、私はピーチウーロンで乾杯。
一口飲み、友人が『美味い』と言ったので『美味しいね』と答えた。

いつもの事。いつもの光景。続かぬ会話。それが僕らの飲み会。

友人は私たちの隣に座っていた先客といきなり会話をし始めた。
これもいつもの事だ。
先客はかなり出来上がっていた。
彼の初対面の人と会話が出来るコミニュケーション能力にはいつも感心する。
一生掛けても、私には得る事の出来ない能力だと思う。
私はカウンターの向こうで注文された品を忙しなく調理する定員さんとスマートフォンを交互に眺めながらタバコを吸っていた。
そんな私が退屈そうに見えたのか、話題を私に振ってきた。
先客との『会話の輪』に入れてくれようとしている。これもいつもの事で、彼なりの優しさなのだけれど私はその優しさがいつも面倒くさく感じて仕方ない。
私は友人が誰かと話していても気にしない。むしろ、その姿を眺めているだけでも楽しかったりする。退屈そうに見えて実は楽しんでいるんだ。それを友人は恐らく知らない。もちろん、言ってもいない。
『一つの会話から一つの会話へ繋ぐ事』が彼は得意だ。
私は必要最低限のことしか普段から喋ることは無いのでいつも会話が終わってしまう。
真っ直ぐ進めばいいだけの会話の車を赤信号で急停止させてしまう。いつもそう。誰に対してもそうだ。

先客が店を出た。

残された友人と私はなんとなく仕事の話をして、なんとなく食事を終えて店を出た。半年ぶりの再会というのに全く会話が弾まなかった。

バーに向かった。

バー向かっている最中に友人が『さっき、退屈そうだったから話に加えてやろうとしたんだけど』と言ったので『いや、俺はあんたが話している姿を眺めているだけで楽しいから放っておいて頂戴な』と言った。言うことが出来た。やっと言えた。

バーの扉を開けると僕らの顔を見て『やぁ』という声が聞こえた。
居酒屋にいた先客さんだった。

心の中でこの町はなんて小さい世界なんだ、とふと思った。

カウンター席に座り飲み物を頼んだ。私は相変わらず甘いお酒しか頼まないし彼は彼で渋いお酒をチョイスしている。

バーにはカラオケの機材があり歌を歌うことが出来る。
友人はバンドのボーカルをしていた経験もありとても歌が上手かった。もちろんその店でも歌声を披露した。
お客さん達は口を揃えて君上手いねと言った。
彼は満更でもない表情をしていた。
バーでも友人は私以外の先客達と談笑していた。
それでいい。これでいい。
別に嫌な気分ではない。
楽しそうに話す友達の顔が好きなだけなんです、純粋に。
私は先客達や友人の歌を肴にお酒を楽しんだ。
いい具合に酔ってきた頃、『飽きたでしょ』と私の顔を見て言った。
その通り。飽きた。
これもいつもの事だ。
『飽きた?』『眠い?』『疲れた?』
飲み会でこの三つのワードのどれかを必ず彼は私に問い掛けてくる。
顔に出ているのかと心配になった。
素直に『飽きた。』と返事をした。
でしょうね、と友人は言った。
正直に飽きた、眠い、疲れたなどと言えるのはその友人だから、親しい仲だからだと思っている。

私はタバコを吸い終えてグラスに残った可愛い色をしたお酒を一気に飲み干し、お代と友人を残して1人で先に帰った。
僕らの飲み会はいつもこう、いつもの事だ。
帰り道はいつも1人だ。
そういえば1人だ。
友人と一緒に帰った事がない。記憶にない。今、気が付いた。

今度飲む時は一緒に帰ってみようかと思う。
気持ち悪い気もする。

友人はこんな私の事を飲みに誘ってくれる。自分でも退屈な人間なことは自覚している。
こんな人間と飲んでいて何が楽しいのか全くわからない。
私の数少ない友達。これからも大切にしたい。

そういえば、帰り道の月は非常に綺麗だった。

写真に残しておけば良かったと後悔している。