月夜

紅色の雲は夜になり銀糸の帳へと変貌した。

傘は持っていなかった。

頬を濡らす雫は冷たく、しかし随分優しい雨だと思った。

手放した慕情が夜風に舞い月へと向かう。

一筋の柔らかな光となれ。

叶わなかった恋も失った恋も、光となり愛しい人を照らしてくれ。

見えない月を仰ぎながら、願った。